2013年11月07日
角田光代さんの「森に眠る魚」を読みました。
本や雑誌はお風呂の中で読むことが多いのですが、途中でなかなかやめられずに、ここ数日間、随分長風呂になってしまいました。
怖い。
文京区でお受験をめぐってママ友の子供をトイレで殺してしまった数年前の事件をにおわせるような内容で、5人の母親が子供という繋がりの中で異様な感覚・感情に陥ってしまう話です。
みんなそれぞれが普通なのに、それぞれがちょっとずつおかしい。
大きな問題が起こるわけではないのに、本人達にとっては心の中を全て埋め尽くされてしまうくらい大きな大きな存在になっていく、ママ友達の生活や行動。
5人がそれぞれ暗く深い闇に落ちていく様子が、日常生活のあまりにも普通な日々と対比されていて、それも怖い。
そして、それが「ありえる」と思える世界があることを知っている自分が、その身近な「ありえる」を思い出してぞっとしたり。
とにかく怖かったです。
恐らく「ママ」をしたことがない人には理解できない世界なのではないかと思います。
「パパ」にも絶対にわからない世界。
私の娘も小学校受験を経験しましたが、受験する子供が少なかった幼稚園ではこんな世界があることは全く知りませんでした。先生もママ達ものんびりおっとりしていたので、助けてもらうことはあれども、精神的なストレスは少しも感じることがない、楽しい毎日でした。
塾ママとも仲良くやっていました。でも、考えてみれば、仲良くしていたママは上の子供をすでに入れている小学校に下の娘もいれようとしていたので、コネ(っていってもいいのでしょうか)もあり、気持ちに余裕がありました。そして私も、どうしても私立に入れたいと思っていたわけではなかったので、これまたのんびり。だからよかったのかもしれないな、と今になってみれば思います。
入学した小学校で初めて「ママ友」って怖いものなのかも、と気付いた次第。
子供と同様、母親も小学校という、初めての世界に足を踏み入れるのですから、右も左もわからない。その中で仲良しを作りたいと思うのは普通の感情です。だけど、仲良しというのは自分の友達を作るのとは違うのですね。思った通りの素直な意見をいってはいけなかったり、同じ「ただの母親」なはずなのに、上下関係があって気を遣って接していかなければいけなかったり。噂話が沢山で誰を信じていいのかわからなかったり。子供という「人質」があるので自由にはできない。不思議な世界でした。
関心事が子供だけ、という人だったら、「森に眠る魚」の登場人物のような闇に落ちて行ってしまうかもしれないなと思いました。
狭くて深くて息苦しい。
まるで、先日の釣りで見た「バケツいっぱいのハゼがひしめき合って、酸素不足であっぷあっぷしていた」感じ(ハゼ達にはすぐに新鮮な水を入れ替えましたよ)。
本を読んでいるとそういう状態の「ママ」の言葉や行動を思い出して、心臓をギュッとつかまれるような嫌な感覚がしました。
それくらい心理描写が素晴らしかったということですよね。
結末はスッキリ爽快ではないところも現実っぽかったです。結末でもないくらいダラダラ~っとしている印象があり、それが本当だよね、って。
私はママですが、この「ママ友の世界」にはいないわ、と思っています。多分。
今日のお弁当。
ロコモコ丼。バターライス(ほうれん草とコーン入り)の上にハンバーグと目玉焼きをのせて。
プチトマトとチーズのスティック。
レインボーキウイと洋梨。