スタッフの日々
盲導犬が不当な扱いを受けていたら
2017年10月10日
今、FBなどのSNSで拡散希望されている埼玉県和光市の「駅で盲導犬を蹴りつけているユーザーの動画」を偶然目にしました。
盲導犬を連れて駅の構内を歩いているユーザー男性が犬を蹴りつけています。その犬はユーザーに対してかなり脅えた様子なので恐らく日常的に暴力はふるわれているのだと思います。
これをみた色々な人が「拡散しましょう!」「盲導犬協会に通報しましょう!」「私は元々盲導犬は反対です。人間の都合で無理ばかりさせてかわいそう!」などという意見でいっぱいです。
私もこの犬がとても不憫になりました。これが日常ならばさっさとこのユーザーから取り上げてしまったほうがいい。そうも思います。
でも、この動画を見ただけで勝手に判断して抗議のコメントをしたり、強い言葉で協会や盲導犬という存在を否定したり、どんどん拡散していってしまうのもちょっと怖いなあって思いました。
まずは事実と現状を把握しないと。
私が最初に思ったのは、「盲導犬協会が定めるユーザーの盲導犬に対する扱い方はどうなっているのかしら?」ということ。
どんな状況であれ、叩く、蹴るなどの暴力はしてはいけない、と決まっているのであれば、もし、こういった現場を目にしたら、「盲導犬に暴力をふるうのはやめてください!」ってその場で強く注意ができますよね。
でも、「ある程度は仕方がない」などという了解のもとでユーザーに引き渡されているのであれば、盲導犬の在り方から考えていかなければならないです。
そう思って、「盲導犬」と検索してヒットした「日本盲導犬協会」のサイトを熟読しました。
どこにもそんなことは書いてありません。
ということで、電話をしてみました。
対応して下さった男性担当者の方に「お聞きしたいことがあるのですが、盲導犬がユーザーに叩かれたり蹴られたりしているのを見かけたら、注意してもいいものなのでしょうか?盲導犬を引き渡す際に、ちょっとした体罰は構わない、などとされているのであれば、見かけても安易に注意はできないですけれど」と聞くと、「いえいえ。暴力は決して認めていないです。ただ、直接注意をされることで、注意した方がトラブルに巻き込まれて危ない目にあっては大変ですので、駅であれば駅員の方、道であれば警察などに通報されるのが一番いいかと思います。」
そして、「埼玉県和光市の駅で盲導犬が蹴られた動画の件でかと思うのですが」といったので、「いえ。確かにその動画はみましたけれど、私はその動画うんぬんではなく、暴力はいけないことだと盲導犬を輩出している方々がユーザーに伝えているのだろうか、暴力はいけないことだとはっきり決められているのだろうかと疑問に思ったからです。いけないことだとされているのであれば、そのような場面に遭遇した際にははっきりと注意ができますから。私の周りにはパピーウォーカーをしていた人も引退犬を引き取った人もいます。その人達がどんな思いで犬達を育ててきたか、どれだけ愛情をかけてきたかを考えても、犬達が怯えたり辛い生活をさせられるのは身につまされる思いです。」と答えました。
担当の方は「本当にそうです。もし、そういった場面に遭遇したら、犬に触らないように近づいてハーネスをみてください。ハーネスには所属団体名と犬の名前が書いてあります。その所属団体に連絡をして犬の名前を伝えれば、ユーザーがわかるので対応ができますから。今回の動画の件は沢山拡散されているようで色々な方からのお問い合わせが来ています。私も動画をみたのですが、うちの所属ではありませんでした。でも、すでに該当団体が動いているかと思います。もし、こういった件で所属団体がわからずにお問い合わせをする際には『盲導犬施設連合会』という協会のとりまとめ団体に連絡してみてください。各協会に連絡するよりも素早く情報が共有できるようになっていますから」と細かく親切に教えて下さいました。
よし!
今後、盲導犬(介助犬なども)に不当な扱いをしているユーザーをみかけたら自信を持って注意をしよう。それと同時にハーネスチェックもしよう。
私は盲導犬反対ではありません。
確かに自由は少ないですし、人間の都合で大変な役割をすることになっているなとは思います。
でも、普通に飼われている動物だって人間が勝手に自分のそばに置いているわけで。
犬の習性や性質をきちんと理解せず、擬人化している残念な飼い主なんてごまんといます。その飼い主達からすれば、ものすごく可愛がっているって思っているのでしょうけれど。
犬は群れ社会で落ち着く生き物なので、ユーザーをリーダーとみなして、そのリーダーの為に頑張ることはきっと嫌なことじゃない。むしろ嬉しいことなんじゃないかと思うのです。
ただそこに信頼関係や愛情があるかどうか。
盲導犬を道具として扱っているユーザーのところにいる犬達は不幸。
「今日も一日助けてくれてありがとう。よく頑張ったね!」と感謝とねぎらい、愛情を持って接しているユーザーの犬は幸せに違いないです。
ハーネスを外して、ただの愛犬に戻る時間は達成感と安心感に満たされているに違いないです。かっこいいなあって思います。
もし私の目がみえなくなったら、盲導犬と暮したいです。仲間として助けてもらいながら、愛情たっぷりべったりと過ごしたいです。
この動画のユーザーは犬を仲間として尊重していないのでしょう。
ユーザーとしての適性がないのですね。失格です。