スタッフの日々
供血協力の話
2020年10月13日
土曜日の朝。
「知り合いの犬」という件名で妹からメール。
「肝細胞癌がみつかったコーギーが手術をすることになり、献血をしてくれるワンちゃんを探しています。 もし、どなたかお心当たりの方がいらっしゃるようならこのことをご紹介いただけないでしょうか」
その飼い主のツイッターも貼り付けてありました。
ま、この文面からしたら、誰かから来たものを転送したんでしょ、と思いつつ、妹に連絡。
「この子、マイナスじゃないの?マイナスだと供血できる子は本当に少ないから大変なんだよ。こんな風に連絡をしてくるってことはきっとそうだよ」というと、「確認する。」
おいおい。詳細を確認もせずに転送したのかい・・・ってまたか、と思う私。
供血募集の話ってしょっちゅうあるのです。
供血ができるのは1~6歳(8歳というところも)の健康な大型犬、となるので、大型飼いはよくお声がかかるのです。
なるも何度もしていますが、なるの場合は病院から直接依頼が来るのでとてもスムーズ。
ですが、飼い主が周りに聞いて回る場合は、本人、またはその周りの犬友達が「よかれと思って」SNSなどで拡散しちゃうので、たいていの場合、現状や供血について無知な「善意の」飼い主達がわらわらと集まってきてしまうのです。それも病院に。
どんなことになるか想像つきますよね。
中型犬や老犬でも連れてきてしまったり、病院に次々と問い合わせてみたり。
私もそんな場面に遭遇したこともあります。
知り合いの犬だったのですが、SNSで拡散はしなかったものの、いくつものグループLINEに一斉に入れ、受け取った犬友がまた声をかけ、で、数時間の間に10頭以上の犬が病院の受付に集まってきちゃったのです。
そのうちの半分以上が年齢とサイズでアウト。
その子はプラスの血液だったので、2頭の子がマッチングして供血に関しては事なきを得たのですが、その間の病院の手間ったら!
休み時間を利用してのマッチングだったのですが、それだけいると受付にも何人ものスタッフを配置しなくてはならなくて(だって、犬だけじゃなく飼い主達も10人以上いたんですから)、みんな心配やら不安やらでちょっと興奮気味、飼い主も整理ができずにいて、あーあ、きっといつもこんな感じなんだろうなー、病院も迷惑とはいえないけれど困ってしまうのもわかるわあ、って感じでした。
SNSで拡散するともっともっと混乱し、すごく迷惑な状況にもなるので、妹には「供血ってさ、悪気なく、それもみんな善意で勝手に動くことが結果的にすごくほうぼうに迷惑をかけることになることが多いんだよ。内容をきちんと説明できるよう、病院や日程などを教えて。」と、こんな状況で非情だよと思われるだろうくらい、何度もいいました。
その時に妹からマイナスだということ、直接の知り合いではなく知り合いの人の仲良しの犬だということを聞きました。
嫌な予感・・・
でも、マイナスの血液型の犬は知っているので、その友人に確認すると、快く「大丈夫だよ!1頭は確実だし、もう1頭もその可能性が大だから2頭連れて行ける!」
すぐに妹に連絡をして、手術の日程、供血のスケジュールを確認すること、平日は飼い主が仕事だから土日のどちらかで飼い主が連れていけることを伝えた上、「内容の確認&例えば、供血に際して供血してくれる子の健康チェックをしてくれるなどがあればそれも伝えるので教えて。たいていそれはあるよ、お礼のひとつとして。」とわざといいました。
なぜここまでいうかと、多分、この飼い主さんは「今はただ、この子を助けたい!」の一心しかなく、SNSで拡散しているだろうし、それがどんな状態になるかも考えていないだろうと予想したから。そして妹が、この当時で「緊急事態なんだから不手際があっても仕方ないじゃん。飼い主の気持ちも考えてあげてよ。」と思っている様子がわかったから。
ダメなのです、それでは。
こうして全く関係のない人達を巻き込むのだから、本来ならば飼い主が冷静に対処すべきだし、妹に伝えてきた人も飼い主がパニックであるならば自分が冷静に対処すべき。そもそも手術は火曜日。緊急ではないです!
自分の犬を守るのは飼い主である自分なのです。自分が冷静に動けないということは犬にもしわ寄せが来ちゃうのです。
何度もいいますが、こういう案件は毎月のようにあるのです。いつも同じ状況になるので、私達大型犬仲間は「本当に必要とするならばいくらでも手を貸すけれど、誰かれなく拡散して本人はテンパっているだけだと動いただけ無駄足になることがほとんどだから、しばらく様子をみましょう」とね。
飼い主から来たという返答はこちら。
・日にち 12日手術前日まで
・時間 土日でもOK お昼休みもOK
・送迎 ご本人
・採血 無料
不適合であっても供血していただければ他のワンちゃんの治療に役立てますとのことです。
(細かいことといえば、普通ならば「送迎をしていただければとてもありがたいですが、こちらでも手配できますのでご協力ください」だし、採血が無料なのは当然。)
友人は「土日は動けるからいつでも行くよ!」といってくれたので、飼い主さんの連絡先を伝えて、直接やりとりしてもらうことにしました。
でも、バタバタしているようで飼い主さんとなかなか連絡がつかなかったので、「もう少し待ってみる」といいましたが、「1時間かかるからとりあえず向かってみるね」と。
その途中で友人が病院に電話を入れると、「供血に来た子が多すぎて今日は忙しくて対応ができないから明日にしてほしい」といわれ、「引き返すわ。何かあったら連絡して。」
あらら。やっぱり。
その後で飼い主さんと連絡がつき、「1匹のコーギーだけがマイナスだったんだけど、サイズが小さくて供血できないから、やっぱり明日朝一で連れてきてください、っていわれたから、明日一番に連れて行くね!」
友人のうちは共働きで保育園の子供もいて、2頭のラブのうちの1頭は2年前に盲目になってしまったという、日々が忙しい中での「飼い主がどんなに心配しているかと思うと」と気持ちよく対応してくれることに感謝しきり。
余計に腹が立つ私。
「供血のお願い時に『大型犬の』と必ずあるのにね。飼い主にも病院がきちんと理解させておくべきだよね!」と妹にひと文句。
妹からすれば、私は転送しただけなのに、だと思いますが、その行為をすることも責任が生じるし、事前にかなり細かく注意をしたんだから、もっと機転を利かせてほしい、と思ったのでした。
で、翌朝。
友人から、「朝一で病院に行ったら、供血協力にきているコーギーがわんさかでうちの子達はできないって病院にいわれちゃった。やるならば入院させて夜迎えに来てくださいだって。夜は難しいから帰ってきちゃったよ。マイナスのドナーカードもみせたんだけど、順番だから、だって。確実に量の採れるラブから先にやればいいのにね。お力になれなくて残念だったわ。」
なんと!
ふざけてる。
友人からのLINEをそのまま妹に転送。
「申し訳ないにもほどがあるよ。昨日、大型が必要だからお願いしますといわれて、昨晩から体調を整えて早めに散歩もして連れていってのこれ。飼い主もきちんと整理しないと!コーギーだと小さくて採れないからと大型を呼んだんだから、コーギー達にもその旨を伝えておくべきだろう。これは病院も飼い主もどっちもどっちだよ!だからいったじゃん!SNSの拡散もやめさせて!」
激怒しながら伝えました。
妹も呆れながら間に入っている人に伝えたそうです。
「SNSは昨日の晩に削除、お断り感謝に変えてもらうよう手配は完了していたのですが、」と返事がきたそう。(おまけにマイナスのラブが朝一で行くことを飼い主は病院に連絡していなかったのですって。どういうこと?)
甘い!
確認してみると、あれじゃなんにも伝わらないです。
・コーギーサイズだと供血には小さいのでまずは協力を申し出てくれたマイナスの大型犬からお願いすることにしたこと
・病院に直接来ると業務に支障がでるので、その大型犬の供血が終了した時点で足りない場合は再度声をかけるのでそれまでは供血ご協力は停止したいこと
・拡散して下さった方にはこの内容もまた拡散してほしいこと
この3点がないまま、ただ、供血協力の記事を削除して終わり、じゃ意味がない。直接病院に行かないでほしいと強くいわないと、相手の頭には入らないです。善意で助けたいと思っているのだから。
本当に残念です。
私も友人にお詫びの言葉だけじゃなくお菓子でもと思いましたし、妹も同じことを言ってきましたが、きっとそれはそうじゃない。
その飼い主?知り合い?が友人にきちんとお詫びをしなくちゃだよね、って。思いつけば、ですけれど。
非常事態だから仕方ない、というのは言い訳です。それは友人側がいう言葉です。
まあ、これで妹も少しはわかったと思います。
うまく段取りすればスムーズな話、なのですけれどね。
コーギーちゃんの手術は無事終了したようです。よかった!
それが一番なんだけれどね。
これを書くかどうか迷ったのですが(妹には充分伝えたので)、これからもこういうことは頻繁に起こるでしょうから、同じ状況に出くわした場合、上手に情報や人間を整理してスムーズな治療を受けられるようにすることが患者を救うことに繋がると思い、載せてみました。